The Economist特集にみるフィランソロフィー新潮流2

socialcompany2006-03-19

下記久しぶりにメルマガに書いてみたので転記します。

★Economist フィランソロフィー特集にみるトレンド
http://www.economist.com/surveys/displaystory.cfm?story_id=5517605

2006年2月25日号のThe Economistに、「A Survey of wealth and philanthropy」という「フィランソロフィー」に関しての特集が16ページにも渡って特集されていました。引用データ、取材ソース含め、包括的に最近のトレンドをまとめている内容で、フィランソロフィーのみならず、CSR、SRI、社会起業家などのテーマがひとつの糸で繋がって理解することができる優れたレポートです。いくつか気になった点を箇条書きしてみます。

■新しい慈善家(フィランソロフィスト)の興隆
ビルゲイツ夫妻がこれまでに寄付した金額は約3.7兆円(ロックフェラーが生涯に寄付した金額は約7000億円)。今までのようにビジネスで財を成した後に寄付をするのではなく、30代・40代で財を成し、同時に寄付をし、かつ、そのお金の使い道に関してもビジネスで培った手法を使うことでより効率的に社会の問題を解決していこうとしている新しいタイプの慈善家が増大している。

例として他にeBayの創始者ピエール・オメディア氏(母校タフツ大学に約120億円の寄付)及びジェフ・スコール氏(社会起業家育成のためのスコール財団創立)や、グーグル創始者でグーグル財団を通じてアキュメンファンドという団体に5億円寄付をしたブリン氏・ペイジ氏が紹介されています。そしてこれはアメリカのみならずロシア、イギリス、ロシアなどヨーロッパ諸国、そしてインドなど、グローバルな現象であるとのことです。
一方で非営利団体は莫大なおかねを無駄に使っている、またビジネス分野に比べて何十年も遅れがある、と経営学マイケル・ポーター教授は指摘している。

■慈善的資本家の誕生
フィランソロフィー市場が成立するために必要なメカニズムとして以下の3つが挙げられる。
【1】慈善家が「投資」できる対象としての団体〜理想的には社会起業家によって創られたもの
【2】営利企業、特に資本主義市場で必要とされているような投資銀行、リサーチファーム、マネジメントコンサルティングファームなど
【3】投資家のごとき視点を持った慈善家

■よい会社とは
CSRには批判的な見方も多くあるが、長期的な株主価値を向上させることができるかというテーマで書かれた下記の書籍が紹介されています。
「Compassionate Capitalism: How Corporations Can Make Doing Good an Integral Part of Doing Well」セールスフォース・ドットコムCEOマーク・ベニオフ氏の著作
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1564147142/250-5700217-9118609

社会起業家の登場
アショカ財団、シュワブ財団等の事例が紹介され、社会起業家の定義は依然誰も分からないものの、ビジネスでのマネジメントスキルを社会的問題を解決するために活用する手法が必要とされていることが強調されています。

■美徳の仲介機関
ゴールドマン・サックスが2001年に上場した際にマネジメント・メンバーが私財を投じて財団を創設しようとしたものの、寄付をする際に、中立的で、質の高い情報がなかなか手に入らないことを感じ、New Philanthropy Capital(NPC)というエクイティ・リサーチ・ファームを創設したという事例を挙げ、フィランソロフィー業界にも social-investment banking, social-investment management,private banking, consulting, data service, research等の機関が必要であるという。

ガイドスター(http://www.guidestar.org/)のように、フィランソロフィー版ブルーム バーグ端末のような情報仲介サービスも登場していて、また戦略コンサルティングファームのベイン・カンパニーはブリッジスパン(http://www.bridgespangroup.org/) という非営利団体専用のコンサルティングサービス、エグゼクティブサーチを提供する 会社を2001年に創立し、今は75名もの専属スタッフがいるとのこと。

将来的にはナスダック、東証のような社会的株式市場のようなものも登場する日もそう遠くないかも知れない、とも指摘。

■信念、希望、そしてフィランソロフィー
今後必要なこととして下記3点、基本的なところではありますが改めて取り上げられていました。

【1】フィランソロフィーインパクトの評価方法
【2】無駄、重複などを避けるための透明性
【3】アカウンタビリティ

特集の著者のインタビューも音声で聞くことができます(約7分)。
http://www.economist.com/surveys/displaystory.cfm?story_id=5543095