Power of Story Telling〜日米の社会起業家カンファレンス@慶応

socialcompany2007-01-23

本日参加したシンポジウムがとてもとても刺激的なものだったので、簡単に報告します。

ジャパン・ソサエティ国際交流基金日米センター・慶応義塾共催シンポジウム「社会変革のデザイナーたち 〜日米イノベーターと語る、個人を動かす仕組みとイノベーション

ジャパン・ソサエティ100周年、慶応義塾創立150周年記念事業として実現した今回のイベントですが、日米の社会起業家が集い、非常に密度の濃いパネルディスカッションでした。特にアメリカから今回参加したスピーカーの方々はいろいろなカンファレンスでキーノート・スピーチを行うくらい各界から尊敬されている方で、なかなか日本では馴染みのない可能性が多いので、その辺を中心にレポートいたします。

セッション1「デザイン」〜デザイン/建築の生み出す行動変化

・ビル・ストリックランド氏(CEO マンチェスター・クラフトマンズ・ギルド)
・岡部友彦氏(岡部友彦設計事務所代表兼Funnybee 株式会社取締役)

・ビル・ストリックランド氏、恐らく日本ではほとんど知名度のない方ですが(Google検索したものの該当ほぼゼロ)、社会的に大きなインパクトを与えた人に贈られる、社会的活動分野のノーベル賞ともいわれるマッカーサーフェローを受賞したり、ビジネス誌FastCompanyで12ページに渡って特集され、それがきっかけでeBay,Steelcase,HPなどから億単位の出資を得るなど、ピッツバーグを拠点に低所得コミュニティを職業訓練学校、陶芸学校、音楽レーベル・スタジオなどの「事業」を起こしながら、多くのビジネス・コミュニティからもどんどん支援の輪を広げている方です。朴訥としたさりげないお話の仕方をしつつも、とてもとても熱いメッセージを持っていて、つい話を聞きながら吸い込まれてしまうような人です。

下記、1998年に書かれた記事ですが、ぜひ読んでみてください。脳みそがとろける気がします。
http://www.fastcompany.com/magazine/17/genius.html (FastCompanyより )

・岡部さんのプレゼンテーションは編集されたプロモーションビデオをうまく利用しながら、日雇い労働者向けの簡易宿泊施設が居並ぶ横浜「寿地区」という地域コミュニティを活性化するプロジェクトのお話でした。いろいろなメディアで紹介されているので、活動の詳細はこちらをぜひ参照してください。
http://www.hamakei.com/special/72/ (横浜経済新聞より)


セッション2 「スケールアウト」〜変化を拡散させるモデルづくりとは?
・ヴィリー・ワン氏 (founder & CEO, BAYCAST社)
・キャメロン・シンクレア氏 (founder & Executive Director, Architecture for Humanity)
 http://architectureforhumanity.org/
駒崎弘樹氏 (代表理事 NPO法人フローレンス)

・ヴィリー・ワン氏は、大手法律事務所、投資銀行勤務を経て、サンフランシスコ地域の恵まれない地域の子供・若者達に対して、デジタルメディアスキルを教育し、エンパワーし、そして雇用を産み出す、というモデルを過去4年に渡って実践、シティグループやNetImpactなどの顧客を持ち、まだ支援している若者の数は数百名規模ではあるものの、確実に実績を出している女性起業家です。印象的だったのは、彼女が上記ビル・ストリックランド氏の講演を聞き、刺激を受け、彼の事業モデルを踏襲する形で現在の事業を始めたこと、そしてビルの紹介でスコール財団、ピエール・オメィディアー氏による財団(いずれもeBay創始者で若き億万長者)から出資を受けていること・・・です。

・キャメロン・シンクレア氏は世界の貧しい地域や津波などの災害にあった地域に対して、その地域・コミュニティが必要としている住居・建物を世界中の建築家をインターネットを使って組織化し、ボランタリーなスキルをプロジェクト化して推進している人。詳しくはチェンジメーカー(渡邊奈々氏著 64ページ〜)に記載されています。2004年にはビジネス雑誌「フォーチュン」誌で、世界を変える7人として選ばれています。

こちらでキャメロン・シンクレア氏のプレゼンテーション動画を見ることができます。
http://www.ted.com/tedtalks/tedtalksplayer.cfm?key=c_sinclair (Tedより)

・駒崎さん、病児保育事業をNPO法人として運営、日本のケース紹介として具体的で、 分かりやすいプレゼンテーションでした。日本ではおなじみ、活躍されている方ですね。

セッション3 「ソーシャル・ファイナンス」〜新しい資金調達の仕組みをさぐる
・アラン・ウェバー氏 (FastCompany誌創刊編集長)
・小松真実氏 (ミュージックセキュリティーズ株式会社 代表取締役

アラン・ウェバー氏は元政治家のスピーチライター・政策スタッフを経て、ハーバード・ビジネス・レビューの編集長として革新的な手腕を発揮した後、新しいビジネスのあり方、インターネットの出現を受け潮目の変革を誰よりも早く見つけ、伝説的なビジネス・ライフスタイル雑誌「FastComapny」を1993年に創刊した方です。
ビジネスの文脈も踏まえ、社会起業家的なアプローチを雑誌を通じてメッセージとして発信し、今ではソーシャル・キャピタルアワードという社会起業家のアワードを雑誌の企画として行ったり、FastCompanyのメッセージに共感した4万人近い読者が、ウェブ上のコミュニティを利用、世界中の都市でローカルチャプターでイベントを企画して、新しいビジネスのあり方について議論するようなムーブメントを作り出した方です。

創刊号の表紙には「The New Rules of Business - Work is Personal, Computing is Social, Knowledge is Power, Break the Rules」と謳い、主にアメリカで80万部くらいの部数を誇る雑誌です。

今は編集長の現役を去り、執筆や講演活動をされていますが、エッセンスがたくさん詰まった話を20分でうまくまとめてくれました。すこし長めにレポートします。

まずピーター・ドラッカー、ジム・コリンズの名前を挙げ、ビジネス界で多大なる尊敬を得ているこの二人が、営利セクターと非営利セクターとの垣根がなくなりつつあり、今後は営利・非営利を問わず、意義ある仕事に自ら好んで取り組み、それがなければしごとを創り出す、というような働き方が広がるだろう、ということを指摘していたことに触れます。その上でジュリア・ロバーツの元夫で歌手のLele Lovettの曲から「no romance without finance」という歌詞を引き合いに出しながら、いかに「資金・ファイナンス」が大切
か、ということを訴えました。

その上で、最近の新しい潮流としてのフィランソロフィストとして下記4名の名前を挙げました。
ビル・ゲイツウォーレン・バフェット、ジェフ・スコール、ピエール・オメディア。
バフェットは昨年のゲイツ財団への巨額の寄付金で有名になり、そして他の3名はそれぞれマイクロソフトとeBayで巨額の富を築き、今までのロックフェラー財団やフォード財団とは異なる、あたかもベンチャーキャピタリストのように、効率的に、効果的な成果・リターンを求める寄付、むしろ「出資」を行っているフィランソロフィストであることを述べました。

さらに、実際に活躍している社会起業家の例として下記5名の名前が挙げられました。
・Vinod Khosla氏 (グーグルにも出資した世界的トップベンチャーキャピタルファーム、 Kleiner Perkins Caufield & Byersのパートナーであり、サンマイクロシステムズの初代 CEO、そして今は代替エネルギー投資という「活動」を行っている「社会起業家」。
ムハマド・ユヌス氏 昨年ノーベル平和賞を受賞し、一躍有名になった、マイクロファイナンスで有名なグラミンバンク総裁
・ボノ ロックバンドU2のボーカルであり、社会活動のためにレッドキャンペーンなど、彼の知名度を社会的な活動に注いでいる
・キャメロン・シンクレア氏
・ビル・ストリックランド氏/ヴィリー・ワン氏
・ロザンヌ・ハガティ氏(ニューヨークのホームレスをイノベーティブな手法で解決しようとするNPOコモングラウンドのエグゼクティブ・ディレクター。僕が13年前、学生時代にインターンシップをしていた、思い出深い団体です。)

小松真実氏は大学を卒業して、そのままミュージックセキュリティーズを創業、音楽アーティストとアーティストを応援したいファンを「ファンド」というしくみをを利用し、想いの連鎖を具体的な方法
で作り出した点、素晴らしいと思いました。社会の中のあらゆることが「ファンド」というしくみを利用することで「想い」から具体的なアクションに落とし込みやすくなるのでは・・・ととても新鮮な視点でした。

駆け足になってしまいましたが、まずは速報、ということでお送りします。ひとつひとつの議論からいろんなヒントがあり、ぜひ今回のイベントをきっかけにダイアローグを続けていきたいと思ってます。また、海外の事例などももっともっと日本の文脈に照らして分かりやすく伝える作業の必要性、感じました。今後ブログ・メルマガを通じて少しでもそんなことの役に立つことができれば嬉しいです。

追伸:
K.Aさんが当日頑張ってつけてくれていたBlogレポートはこちらです。臨場感あふれる報告です。

最後に、今書ききれなかったことなど、ぜひ次回ソシアレ・サロン(2月2日(金) 19:30@恵比寿
ぱれっとで話ができたら、と思ってます。参加できる方はぜひsocialcompany@gmail.com までご連絡ください。

そうそう、このイベントのプロデュース、そして当日コーディネーターまで大忙しだった井上さん、本当にお疲れ様でした!そしてこんな夢のようなイベントを開催してくれて、多くの関係者の方に対しても含め、本当に感謝です。

メルマガvol. 12。更新しました。バックナンバーなど、よかったら こちらから
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