『ウェブ時代をゆく』(梅田望夫氏)ブックレポート

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

11月10日発売の『ウェブ時代をゆく〜いかに働き、いかに学ぶか』(梅田望夫氏著 ちくま新書)を今読み終わりました。前作『ウェブ進化論』で今起こりつつある時代感覚を巧みに、そしてあくまでポジティブに描いた方だけに期待して読んだのですが、期待を裏切ることなく、膝を打つような新しい視点や、具体的な処方箋、そして読者、特に若者に対する惜しみない愛情と応援の気持ちが心地よく、一気に読むことが出来ました。

ウェブ進化論」においてこれから起こりうる時代の予兆、未来予想図を描いていたのに対し、今回の「ウェブ時代をゆく」に至っては、その新しい時代をどうサバイブし、その時代を楽しみながらそれぞれの「想い」をどう実現していくか、が具体的なロードマップ、ヒントがちりばめられて爽やかに描かれています。

梅田氏のエッセイはフォーサイトでの連載を通じ、気付いたら少なくとも毎月1 回、18年近くも目にしていて、常に定点観測の一人としていただけに、今までのエッセイを読んでいたときの自分を振り返りながら、とてもよくメッセージが伝わってきました。全部で244ページの新書でありながら、珍しくページの頭に折り目を20個以上、コメントもたくさんつけながら思わず一気読みしてしまいました。

取り急ぎ気になったフレーズを・・・

「時代というものがあって、今の時代は年寄りが威張る。そのつもりはなくても、生きている以上、ジャマになるのは仕方がない。そんな時代に若い人はどうすればいいか。いちばんまともな生き方は、年寄りがダメな世界で威張ること。ならばウェブは格好の分野ではないか((p.13)

「良き「志向性の共同体」作りに多くの人がリーダーシップを発揮するようになれば、無数の営みの中から、「一日五分の善意や小さな努力」を持ち寄る参加者を世界中から惹きつける創造的コミュニティも現れるのではなかろうか(p.86)

時間だけがすべての人に平等に与えられたリソースである。その時間を、自らの志向性と波長の合う領域に惜しみなくつぎ込む。それが個を輝かせる。大切な時間というリソースを自分らしくどう使うのか。そこがこれからはますます問われる。(p.90)

「重ねて言うが、こうしたネット・アスリートの資質を持った人は、日本の学校教育システムからこぼれ落ちる人たちの中にもたくさんいる。自分が選んだ高速道路を走りぬき、その先の「大渋滞」を抜けて専門を極め、それで飯を食う。これは「高く険しい道」ではあるが、やりがいのある素晴らしい人生である。人生の幸福とは「好きを貫いて生涯を送ること」だと私は思う。人からどう見えるとか、他人と比較してどうこうという相対的基準に左右されるのではなく、自分を信じ、好きを貫く人生を送ること。本当の幸福とは、そういう心の在りようにこそあると思う。ネット・アスリートの素質が見えている人たちは、心おきなく思い切り、高速道路を疾走すればいい。」(p.96) 〜「The only way to do great work is to love what you do (スティージョブズのスピーチより)」

「「好き」を見つけて育てるための思考法は何かないのだろうか。本章ではこの「やさしくない」問題に挑戦してみたい」(p.142)

英語圏ネット空間の地は、「次の10年」で圧倒的に充実していくだろう。このまま10年が経過すると、英語圏の「学習の高速道路」が著しく充実し、英語圏に生まれ育つことの優位性がこれまで以上に増幅されてしまうのではないかという危惧すら抱く。ひとりの個人として「英語圏ネット空間のの知の充実」という現象を眺めれば、「英語力を徹底的に磨くことこそがこれからの知的生活の充実に必要不可欠だ」という結論にたどり着く。」(p.172)

参考までに・・・Cnetに先日書店で行われた講演会の様子がupdateされています。
リアルの世界に生きる人は、ウェブ時代をどう生きたらいいのか--梅田望夫氏講演