コモン・グラウンド、ロザンヌ・ハガティ氏に関して、補足


昨日の投稿に、コモングラウンドの、ロザンヌ・ハガティさんが何をしている人か、また、何がどうすごいのか、詳細を、というリクエストがあったので可能な範囲で補足しますね(Youtubeのリンクも切れてしまっていて失礼しました。blogページからは見れませんが、Youtubeのページで「Common Ground」の検索で見ることは可能です)。

さて、コモングラウンドに関して-。社会起業家として著名なフェローであるアショカフェローを受賞(2008)、アメリカで権威のあるマッカーサーフェロー(天才賞(Genius Award))受賞者といってもピンとはこないのが普通だと思います。

思いつくとことで下記4点、挙げてみました。

【1】新しい、革新的なキャリアの歩み
先日の講演会でも冒頭、こんなことを話されていました。
〜私は社会起業家になりたいと思ったことは一度もなかった。ホームレスの問題に大学卒業後のボランティアプログラムで関わるようになり、その問題の深刻さ、重大さを知るにつけ、より興味がわき、やりがいを感じ、そして効率的で革新的な方法でその問題解決に取り組んだ結果、今に至っている、と。

大学卒業時の彼女の選択肢としては、周囲の友人、クラスメートがいくから、という理由でロースクールにいくことも考えていたそうです。ホームレス問題に取り組み、その仕事に「魅了」されるにつけ、応募の延期を伸ばしに伸ばし、結局ロースクールには行かず、いまでこそ「社会起業家」と呼ばれるようなキャリアを築いた点はユニークな点でした。

また、ボランティア活動の早期に、従来のホームレス対策の手法に「なにかおかしい?」と疑問を持ち、その問題意識を周囲を巻き込みながら次々に具現化していった手腕などは、多くの経営者、政府有力者をうならせ、惜しみない協力を差し伸べる原動力でした。

【2】人を巻き込む力
大学卒業後、ホームレス関連のボランティア団体、そして住宅関連の福祉施設で計8年の勤務の後、彼女はニューヨークのど真ん中、タイムズスクエアに立つ老朽化したホテル「タイムズスクエアホテル」が売りに出ていることを見つけ、この建物をホームレスの自立支援のための施設にするアイディアを思いつきます。ホームレス支援団体大手、不動産業界、ホテル業界、ニューヨーク市政府などのトップにも提案をするものの、プロジェクトの意義は理解してもらえるものの、あまりにリスクの大きいプロジェクトゆえ、提案はどこからも受けいられない結果となってしまいました。
講演でも話して意いたとおり、「最後の交渉先で断られた日、非常に残念に、肩を落としながら地下鉄に乗って帰ったことを今でもよく覚えている」とのことです。

彼女のすごいところとして、驚くべき点は、このような希望が消えそうになったときにも、自分を信じ、自分のミッションを信じ、粘り強く解決方法を求めた点です。

「要するに、不動産金融がわかって、地域のポリティクスに詳しくて、政府とやりとりができて、歴史的建造物の価値・保存法などが分かって、建物の設計やデザインができる人さえいれば、いいのに!」
と思い、ふと「気付くとそのようなことができるのは自分である、ということに「はっ」と気付き、ゼロから非営利団体コモングラウンドを設立し、その数ヵ月後には2900万ドル(約31億円以上)の政府からの住宅用無担保融資ローン、そして税金控除等の仕組みも利用しながら、民間企業からも2200万ドル(約24億円以上)の資金を得ることに成功したのです。彼女が当時30歳前後で、自身のアイディアと企画書のみで実現したこととしては本当に驚き、尊敬してしまう点です。こうして、タイムズスクエアホテルは大規模な改築作業を経て、652部屋を有する元ホームレス、そして地域の低所得者、高齢者、エイズ患者などが共に生活し、自立を目指すコミュニティとして生まれ変わったのです。

【3】圧倒的な実績、規模
1990年にコモングラウンドが設立して以来、コモングラウンドのスタッフは200名以上、年間予算10億円以上の規模となり、タイムズスクエアホテルで培われた革新的な手法はタイムズスクエアと同規模のプロジェクトを含む複数のプロジェクトをニューヨークで運営し、ニューヨーク以外にもコネティカット、ワシントンDC、LA、ニューオーリンズ、ロンドン、トロント、そして東京でもプロジェクトを進め、世界中のホームレス問題に対して新しい革新的な手法を伝える仕事に取り組んでいます。

【4】生き様・人への思いやり
ロザンヌ・ハガティ氏に会った多くの方が感銘を受けるのが、彼女の人柄、人への思いやりの気持ちです。
先日の講演会終了後のレセプションでも、最初から最後まで1時間半くらい休む間もなく参加者からの質問に一人一人丁寧に応じている様子が印象的でした。スタッフの方に伺ったところ、同じようなイベントが朝から2本も既に入っていて、さぞ疲れているところ、嫌なそぶりひとつせず、真剣なまなざしで一人一人の方との交流を楽しんでいるようですらありました。「サポーティブハウジング業界のマザーテレサ」などと呼ばれる所以です。また、これもよく言われることですが、彼女はコモングラウンドの施設に住む住人の名前、そして病歴などもほぼ全て記憶していて、建物の中での何気ない挨拶、例えば「元気?」などと気を配ることを本当に実践しているところです。

思いつくままに書いてしまいましたが、英字メディアにおいて、いろいろと紹介されている記事があります。よろしければご参照くださいませ。

★Fastcompanyの記事です(2002)
http://www.fastcompany.com/magazine/66/socialcapital.html

★アショカフェロー受賞時のプレスリリース 2008
http://www.commonground.org/?p=538

★大学の卒業生向けの雑誌での取材記事(2005)
http://www.openingdoorschanginglives.org/pdfs/COFHE.RHaggerty.pdf