「空港にて」(村上龍)〜希望がもらえる短編小説

駅の売店であまり大きな期待もせずに買った本に、久しぶりに小説の楽しさを感じたのでひと言。
空港にて (文春文庫)

8つの短編集は、居酒屋、公園、コンビニ、披露宴会場、カラオケルーム、駅、空港など、日常の平凡な場所を舞台にして描かれていて、短い物語を通じて個人の内面が精緻に表現されていて、つい「うまいなぁ」と感じたほど。

作品の中のいくつかは留学雑誌のために書き下ろされたもので、海外に留学することが唯一の希望であるような人間が主人公。あとがきにはこうも書かれてます。

考えてみれば閉塞間の強まる日本の社会において、海外に出るというのは残された数少ない希望であるのかも知れない

とても計算されて書かれているとは思うものの、説教ぽく「希望を持とう」と書かれているよりも村上龍のなんともいえない脱力的な視点は個人的にはとても響きますね。

希望といえば、同じ村上龍の小説「希望の国のエクソドス」の中で中学生のが語る有名な台詞を思い出します。

この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない

昼間の電車の中で一気に読んでとても希望を貰った一冊です。