新潮流〜Obama Inc.、アクティビィズム2.0、for-profit activism

上記のコメントを裏付けるような記事がタイムリーにあったので、2つほど簡単に共有いたしますね。The Economistが、IT業界のニュースメディアCNETが、オンラインプラットフォームをうまく使い、社会的課題に取り組む「ビジネス」がとても活発で、「今後要注目」と指摘しているのが予言めいています。

The Economistの記事に紹介されているのがVirganceという会社で、オンラインツールをうまく用いて、例えばサンフランシスコの地元地域内で太陽電池共同購入を可能にさせたり、社会的責任を果たしている「いい」プロダクト・サービスを購入・利用させるようなプラットフォームを提供している会社です。

CNETの記事ではオバマキャンペーンの時に注目されたマーケティング手法(cause-related marketingなど)が、今後ますますビジネスの世界で活用されるだろう、ということがアツく書かれています。

For-profit activism〜Change we can profit from
Jan 29th 2009 | The Economist

Obama Inc. - Web activism for profit
February 3 | CNET

ソーシャル・デザインに関してのシンポジウム、参加報告

今日は『ソーシャル・デザイン(デザイン+コミュニティ+ソーシャル・インパクト)』と題したシンポジウムに参加する機会がありました。主催が財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金 日米センター、ということで、アメリカからのゲストを交え、「社会にポジティブなインパクトを与えるためにデザインの果たす役割は?」、というような内容を幅広く学ぶ機会でした。


気になっていたのは「GOOD」という、よいことを行い、よい生き方を求める人々を対象にしたCoolな隔月誌を26歳で創業し、現在28歳のマックス・ショア(Max Schorr)さんのお話でした。

極めてレベルの高いデザインで雑誌、オンラインサイトを運営し、雑誌の購読者からの購読費20ドルは全額同社が選ぶ12の非営利団体(Kiva, Ashoka,Teach for America、Room to Read等)に寄付されるしくみです。現在購読者が7万人の定期購読者なので、140万ドル(約1億26000万円)以上が寄付された計算になります。

雑誌発行・会社運営コストは広告費のみとのこと、雑誌を見ると主なクライアントはクサス、クリーンテックの風力発電会社大手など、高額所得者向けのメジャークライアントも含まれています。スケールが大きすぎてすぐに理解するのが難しいものの、新しい時代感覚、新しいビジネスモデルが生まれてきていることを感じました。

世界的に著名なデザイン会社IDEOデジタル部門で顧客サービス戦略を担当しつつ、2007年に「デザイナーズ・アコード」というNPOを設立、現在10万人以上が登録するデザイナー、企業、教育関係者のコミュニティを運営するヴァレリー・ケーシー(Valerie Casey)さんの話もとてもパワフルなものでした。*デザイナーズ・アコードに関してはこちらのブログで詳しく紹介されています。

デザイナーのオープンソースを加速し、いいアイディアを世界中で共有しながら社会と環境にポジティブなインパクトを与えることを目指しているとのこと。

2つの例から、正しいメッセージを優れたクリエイティブ(デザイン)を使い、オンラインツールをうまく使いネットワーク・コミュニティ化する中で問題解決を目指している姿が印象的でした。

青春群像 『ソラニン』〜成仏できないサラリーマンに捧げる?!

普段何かとお世話になっているTさんから紹介された漫画『ソラニン』((1-2)浅野いにお 集英社)がとてもとてもよかったので簡単にご報告。20代前半のモラトリアムな若者群像を通じて、青春時代に大切にしていた何かを大切にしつつ、それでも現実と向かい合わざるを得ない物語が、ノスタルジックに心に沁みます。よろしければ是非♪

ソラニン 1 (ヤングサンデーコミックス)

ソラニン 1 (ヤングサンデーコミックス)

スターバックス、ボランティア活動へのコミットメント。デザインの持つ力

先日のブログでもお知らせしたオバマ政権発足前日に開催された全米で奉仕活動を推進する記念日に連動した企画として、スターバックスが企画したプログラムがとてもユニークかつ斬新なのでご紹介。

こちらは、「Pledge5」と題したキャンペーンで、5時間のボランティア活動をする(〜1/25)と、スターバックスのコーヒー一杯がタダでもらえるというもの。今もまだカウントが続いているようですが約130万時間分のボランティア活動、つまり26万人程度がこのキャンペーンに参加したことになります。

さすがスターバックス。この不況の中、CSR活動、マーケティング活動の一環とはいえ、膨大は予算を割き、政府のイニシアティブも利用しながら社会的に意識の高い層へ向けたブランディングがしなやかですね。

ちなみに、プロモーション動画(1分)にはオバマ・キャンペーンのプロモーション動画にも起用された著名ヨガ・マスター/ヒップホップアーティストのM.C. Yogiが登場、とても洗練されたつくりになってます。オバマキャンペーン動画「Vote for Hope」と併せてよろしければご覧下さい。

Starbucks asks Are you in? Featuring MC Yogi

■MC Yogi: Obama '08 - Vote for Hope

不況の影響でコーポレート・レフュージー(企業難民)が、NPO/ソーシャルベンチャーへ?

ここ最近の不況の状況を受けて、アメリカのビジネス・プロフェッショナル、或いは新卒MBA保持者がNPO・ソーシャル・ベンチャーの仕事に興味を持っているという現象を取り上げた記事が複数あり、いろいろな視点から議論がされていてとても興味深いです。

『Skyrocketing Interest in Careers in Social Entrepreneurship and Start-ups Evidenced by MIT Sloan School “Tech Trek”」(MITビジネススクールの研修旅行に見られる、スカイロケット的な(急激な)社会起業家やスタートアップに対する興味)』という記事よると、通例グーグルやYahooのようなシリコンバレーの著名企業を訪問するMITビジネススクール学生の研修プログラムが、今年は代わりにソーシャルベンチャーの団体(kiva等)やスタートアップベンチャーを訪れ、学生も社会起業的なキャリアに興味を持っているとのことです。おおむねこの記事の著者は優秀な人材が「業界」に興味を示すことに好意的な視点で記事が書かれています。

一方、今月のFastCompany誌に掲載されたコラムは、『Nonprofits? Not a Recessionary Refuge for Job Seekers」NPO?不況時求職者のための避難所ではないですよ)』、というやや過激とも思える視点からこの現象を捉えています。コラムの著者は自身もロースクール出身でありながら卒業後からソーシャルベンチャーを起業、今は「Do Something」というNPOのCEOをやっている、いわゆるたたき上げの方で、今の時期に昔のクラスメートや元ウォール街で働いていた友人・知人からの転職相談の数が急増して、フラストレーションを持っている、とのことです。曰く、彼ら・彼女らは今までNPOの仕事に興味を示した訳でもなく、何をやりたいか聞いても「NPOならば何でも・・・」というような「業界」への理解がないことに対し、「(景気がよくなるまでの)一時的な避難場所ではないです!」という言い分のようです。

Change.org内の社会起業関連のブログでも、この営利 VS. 非営利という相対する概念を超えて、両者のいい部分がいくことが望ましい、とコメントしてます。

「Business World Refugees in the Nonprofit Sector」 (change.org)

日本の場合、すぐに転職先となるようなNPOはまだないかもしれないものの、中途採用を行うようなソーシャルベンチャーが育ったり、或いは政府での中途採用などが増えるかも知れませんね。

イベント情報: TED、ダボス、おとなのカタリバ

簡単なお知らせだけになってしまいますが、下記3つ、タイムリーなイノベーション、社会起業関係のイベント、お知らせです。

テーマ「Shaping the Post-Crisis World」

毎年この時期に開催されるダボス会議、世界のビジネス経営者、国家元首が参加するカンファレンスとして知られるますが、ここ数年、「社会起業家」の参加が顕著です。昨年は参加者全員に『The Power of Unreasonable People(邦訳:『クレイジーパワー:社会起業家‐新たな市場を切り拓く人々』英治出版)が配布されたり、今年の参加者リストの分類として社会起業家参加者リスト一覧が特別にあるなど、いまや会議の主役の一部になっている様子が分かります。

‐日本でも話題になっている「ダイヤローグ・イン・ザ・ダーク」の創設者等も参加されるようです。

クレイジーパワー 社会起業家―新たな市場を切り拓く人々 (Harvard business school press)

クレイジーパワー 社会起業家―新たな市場を切り拓く人々 (Harvard business school press)

ダボス会議ではプレゼンテーションがほぼリアルタイムで動画も提供されるので興味のある方はチェックしてみてください。

このメルマガでも何度か触れたことがあるTED(Technology, Entertainment, and Design)。1984年に始められた、世界のイノベーターが集い、各20分間のプレゼンを行う、年に一度のカンファレンス。今年は25周年にあたる記念で、場所もカルフォルニアロングビーチで行われます。今年の著名なスピーカーとしてはビル・ゲイツ氏が含まれますが、日本では知名度がない、斬新なイノベーターが毎年登場です。

TEDに関してのCBSニュースでの案内動画(8分)

TEDでの人気のある無料動画ベスト10(とてもアツいです)

大人のカタリバ Special by NPOカタリバ 2/1 12:00 - @九段下サイエンスホール
〜格差時代の夜明け前 若者漂流時代をどう生きる?〜

最後になりますが、日本で開催されるイベントを1つご紹介。

若い世代が現在の雇用不安を乗り越えて、新しい価値観でキャリアを創り出していくためのきっかけになればいいなぁ、と思っています。国会議員、大学教授、メディアそして若い世代の方が400人規模で語る、とのことです。

【イベント参加報告】BRAC総裁、社会起業家研究家を招いて by 内閣府&東工大

1月24日、内閣府経済社会総合研究所東工大の国際的社会起業家養成プログラム共催の国際シンポジウム、「社会起業家を育てる大学教育と社会起業家研究」に参加してきました。

イベント案内 (PDF ファイル)

世界最大のNGOの一つ、BRAC(Bangladesh RuralAdvancement Committee)創始者、総裁のファズレ・ハサン・アベッド氏と社会起業家研究で国際的に活躍されているナヴァラ大学ビジネススクールIESE 教授のジョアンナ・メイヤー(Johanna Mair)氏の講演、パネル・ディスカッション、というとても密度の濃いものでした。

BRACは1973年にはバングラデシュ北東部農村の社会開発を目的に設立され、バングラデシュ及びアジア・アフリカの開発途上国において30年以上も多様な貧困撲滅事業を展開しているNGO団体で、現在は、職員数約 10万人、140の地域オフィス、年間予算約600億円の事業規模を誇る世界最大規模のNGOにまで成長しています。

ノーベル賞を受賞したムハマド・ユヌス氏のグラミン・バンク(バングラディシュ)と同様、マイクロファイナンスを通じて貧困層、女性の支援などをしつつも、病院、小中高、大学での教育機関運営、そしてそれらのノウハウをアフリカやスリランカなど8カ国に展開しているあたり、正直、圧巻されるスケール感、スピード感、そして実績でした。まさに巨人と呼ばれるのも納得です。NGOでありながら、ひとつの国家のような産業を興し、海外の貧困の支援までも、ビジネスの手法、海外政府とのパートナーシップを活用しながら進めている様は話を伺いながら呆然としてしまう程でした。

今後こうしたグローバルな社会起業家のココロミから刺激を受け、日本でも新しい動きが起こるのでは、という気になりますね。簡単な報告になってしまいますが、興味のある方は下記のリンクからたくさんの動画を閲覧することが可能です。

http://www.brac.net/index.php?nid=78

その中で当日プレゼンの前に映し出された動画はこちら(11分程度です)


ジョアンナ・メイヤー(Johanna Mair)氏のお話は、世界的なレベルで社会起業家研究が進んでいて、特にムハマド・ユヌス氏のノーベル賞受賞後、学術研究が盛んになっていることなどに触れ、今後もリサーチ・研究の対象として社会起業分野が刺激的である、と話されていました。

早い時期から世界で活躍する社会起業家に注目され、MBAプログラムで研究をされているとのことで、豊富な論文(↓)がウェブサイト等でも紹介されてます。興味のある方は下記リンク、ご参考までに。

http://insight.iese.edu/listadoArticulos.aspx?tipo=3&id=Johanna+Mair